***








「ここが───」





 フェルダン王国“ルシャ王都”



 ルミ達は、その目の前に立っていた。



 強大な正門を目にし、驚きのあまり口をぽかんと開けたまま固まっている。



「大きい......」



『当たり前だ。この国最大の都市だぞ
門番の警備もこの国随一だ。この都市に入るものは全て、国から発行された”通行許可証“の提示と身分の確認、国内在住の者は家紋認証をやらないといけない。
今のままだと、確実にルミはこの正門を通過することすらできないな』



「ええっ!」



 感動のあまりそれを口にしたルミを、ノアは簡単にあしらい、さらにとんでもない事を言う。



(そんなの聞いてない...!)



「それじゃあ、先に進もうか」



 未だにノアの声が聞こえていないオーリングは、ルミの狼狽えなど知ったことかと正門の中に進もうと促す。



 ノアのおかげで、当初予定していたよりも丸一日分早く王都に到着することができた一行。



 正門の内側へと足を進めていくと...



「待て、何者だ」



 門番なのか、武装をした衛兵らしき人が不審げにこちらに近づく。



 あぁ、捕まっちゃう!!と絶望したルミを尻目に、「ちょっと待っててね」とそれに気付いたオーリングはノアから降り、衛兵へと近づいていく。同時に頭に巻いたターバンとマントを解いた。



 すると、その衛兵はオーリングの姿を完全に目視したとたん、目を丸くし狼狽え始めた。



「!!プ、プロテネス卿っ
申し訳ありません!!と、とんだ御無礼をっ!!」



「あぁ、構わない。
すまないが、突然の帰還命令のため通行許可証を準備できなかった。
王都へ入りたいのだが、どうにかならないか?」



「とんでもない!貴方様のような方が通行許可証など提示していただく必要など...」



「いや、私ではない」



「えっ?」



「彼女達の分なのだが」



 そして、オーリングの目が指す方向を衛兵が見る。



 そこには、世にも珍しい一角獣─ユニコーンと、それに跨った美しいプラチナブロンドの端麗な女性。



 それを見た途端、衛兵は顔を赤らめ、感嘆の声を漏らした。



「あぁ......なんと美しい......」



「僕の連れなんだ。なあ、どうかな?」



「はっ、はい!プロテネス卿のお連れの方なのであれば、おそらく大丈夫かと!
あ、記名だけはお願いするかと思いますが.........」



「ああ、それなら...
ルミちゃん、記名だけするみたいなんだけど大丈夫?」



「は、はい......」



 ということで、異世界からやって来たルミは、わずか記名だけという、いとも簡単な事のみで、王都内に入ることができたのだった。