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「ほら!頑張って!!ルミちゃーん!」



「待ってっ.........はぁ、はぁっ」



 状況を説明しよう。



 長い夜が明けて、私は朝日を浴び、目が覚めた。目が覚めたら元の世界に戻っているかもしれないという儚い願いは、脆くも崩れさり、目の前には青く生い茂る森が広がっていた。



 オーリィさんはもう起きていて何やら準備をしていた。



「あっ、おはよう!起きた?
体調の方は大丈夫、ルミちゃん。」



「おはようございます、オ...オーリィさん
体調はお陰様で大丈夫です」



「よかった!
それ、少ししかないけど朝飯ね!」



 オーリィさんが指でさした先にはサンドイッチがあった。



 ありがとうございます、といって川の水で手と顔を洗いそれに手を伸ばし一口食べた。



 シンプルだが美味しいものだった。



「それ食べたら、すぐに出発するけどいい?」



「え?」



 そして、今、私はオーリィさんのあとを必死に追いかけている。



 ある程度体力はあるほうだと思っていたが、何せ彼の進むスピードが異常なほどに速い。



 おぶって行こうかと提案されたが、お世話になっている身でそれはあまりにも申し訳無さすぎる。



 しかし、急いでいる道中の足を引っ張ってしまってはどう仕様もない。
 なので



「オーリィさんは私を無視して進んでください。その後ろを勝手に着いて行きますから!どんなに姿が小さくなっても無視してください!」



 と言った。



「そう?でも、無理しちゃダメだよ?」



 と、オーリィさんも渋々納得してくれたのだが、山道は流石に私ではきつすぎたみたい。



 どんどん突き放されて、今の状況に至る。



「(きっつい!!)」



 私は音にならない声を出して必死に追いかける。



 ちょうど山を越えたところでオーリィさんが待っていてくれた。



「よく着いてこれたねえ!
そんな細いのに意外と体力ある?」



 冗談めかしてそう言ってくれたものの、私はそれに笑って答えられるほど余裕は全くなかった。



「はぁ、はぁ、はぁ、...げほっ」



「だ、大丈夫?
少しゆっくり歩こう。」



 あまりにきつそうにしていたからなのか、背中をさすりながら歩調をゆっくりとしたペースに変えてくれた。



 呼吸を整えながら、それでもなお歩みだけは止めまいと歩き続ける。



 その根性にオーリングが密かに驚いていたことは知らない。



 暫くすると、ようやく喋れるくらいにまで回復した。



「.........すいません、オーリィさんの足を引っ張ってしまって......」



「ルミちゃん、謝ってばっかだね
足なんて引っ張ってないからさ、気にしない気にしない!!そんな気ぃ張り過ぎるとすぐ年とっちゃうよ!!」



「........................オーリィさんに言われるとやけに説得力があるからヤです......」



 なんで!!?と焦るオーリィさんを置いて、とにかく足を進める。



 森を抜けるとほとんど平道で随分と歩きやすい。おかげでだいぶ楽に歩けるようになった。



「オーリィさん、もう大丈夫です。
急いでるんですよね?走りますか?」



「えっ??!走んの?!」



「走らないんですか?」



「あ.........はい、走り、ます......」



「分かりました。行きますよ」



「うおっ!!待ってえーー!」



 こうして、オーリィさんと二人だけのマラソン?が始まったのだった。