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「・・・・・・・・・・・」



「・・・・・・・・・・・」





(き、気まずいっ......!!)



 ルミアとシェイラはサクラの下に隣り合って、けれど間をかなり開けて座り込んでいた。



 お互い赤く染めた頬を見られないように、伏せたり逸らしたりしている。



 我に返った途端こんな調子で、話もしないものだから気まずくてしょうがない。



 もちろんシェイラも同じふうに感じているに違いない。



 この場所に来た時の心地よい静寂が、何とも懐かしかった。



 たった数時間前の事なのに。



 ルミアがそんなことを考えていると、シェイラが「あっ」と、何か思いついたように顔を上げた。



 何事かとルミアも顔を上げてシェイラの方をうかがう。



 シェイラはポケットに手を突っ込んでごそごそと何やら探し物をしているようだった。



「...どうかしたんですか?」



 十年前の幼いころはため口で話していた。それは今でも覚えている。



 シェイラも以前のように話してくれた方がいいと言っていたが、そうしようにもこの十年間の癖はなかなか直らないもので。



 結局今も敬語のままだ。



「あ、よかった忘れてなかった...! ルミ、これ受け取ってくれないか?」



 その言葉とともに、ルミアの前に差し出された手。



 受け取ろうと手を伸ばすと、その上に何かが落された。



 小さな白い何か。



 よく見ようと、それを顔に近づける。



 それは



 白いイヤリングだった。



 真珠のように艶やかな光沢を帯びたそれは細長い雫の形をしており、その上下の端にはピングゴールドの装飾が施されていた。



 こんなもの見たことがない。



 白い魔導石も、こんなに綺麗なイヤリングも。



「魔導石の、イヤリング...私に...?」



 思わずそう尋ねていた。



 シェイラはにこりと微笑み、そして頷く。



「俺が貰ったこれのお礼と、ルミの復帰祝いを兼ねて
 俺も初めて作ったからルミに似合うように出来たか分からないけどね」



 ジンと胸の奥が熱くなる。



「まったく...シェイラさんも兄さんも...センス良すぎ」



 大きな藍色の瞳に涙を薄ら浮かべながら、ルミアは「ありがとうございます」と言って片方だけのイヤリングを右耳につけた。



「お揃いですね」



 そう言って笑うと、シェイラは薄く頬を染めてルミアの手を取り「うん、そうだね」と返すのだった。