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「ルミーーー!!!
わああ〜〜〜ん!!良かったあーー!!」



「ミア嬢......!!っううう〜〜〜っ!ぅあ......ひっく......」



「ちょっ......二人ともっ!落ち着いて!」








王都が襲われてから2日。



ここは、特殊部隊専用兵舎の大広場。



ルミアは二人の男に泣きつかれていた。



「おい、アポロ!ネロ!いい加減ルミアから離れろ!!」



「いーやーーーー!!」



「我儘言うんじゃねー!!ガキか、テメーら!!」



ルミアにへばりついて離れない2人──特殊部隊アポロとネロ───の首根っこをつかみ、ジンノが力任せに引き剥がそうとする。



しかし二人はルミアにすがりついて離れようとしない。



「~~~~っいい加減にしろ!!!」



 ゴゴンッ!!



 業を煮やしたジンノの鉄拳が振り下ろされた鈍い音が広場に響いたのだった。







 ◇






 ようやく二人から解放されたルミア。



 アポロとネロは、ジンノの鉄拳が余程痛かったのか頭を押さえ唸りながら床に寝転んでいる。



「兄さん、やり過ぎ...」



「フン」



 ジンノはと言えば、悪びれる気はまったくないようだ。



「はあ...」



 呆れて溜息をつく。



そんな時、



「おーい、ルミちゃんいるー?」



と言いながら、オーリングがやって来た。



大広間に顔を出すなり、アポロとネロがのされているのを見て「げっ......またやってんの?」と顔を歪ませる。



それもその筈。



ここ数日、ルミアいるところに必ずと言っていいほど同じ光景が転がっているのだから。



「オーリィさん、私にようですか?」



「ん?...ああ!そうそう、セレシェイラ陛下が呼んでたよ。ノアと一緒にあの庭に居ると思うから」



「! はい、ありがとうございます!」



じゃあ兄さん、行ってくるからあんまり二人を虐めないでね。



ルミアはそう言い残し、シェイラの元に向かって走っていく。



あの事件の日以来、ルミアは訛った体を鍛えなおす名目で特殊部隊の兵舎に入り浸っていた。



勿論、ほとんどの時間はジンノ相手に体術や魔術の特訓に当てており休憩中はアポロやネロの相手。



当然シェイラとは会えていなかった。



シェイラ本人も、第二王子として又、まだ本調子ではないシルベスターに代わってユーベルの処遇や街の修復活動などについての会議に参加せねばならず、暇がなかった。



ようやく会える。



その思いに、顔が緩んでしまうルミア。



明らかに嬉しそうなルミアを見送ったジンノ、オーリングはしばらくぼんやりとしていた。