「おうおう、苦戦されていますなあ、プロテネス卿」
何処からともなく、ひしゃがれた老人の声が聞こえる。
一度、聞いたことがある声。
(シルベスター陛下を襲った奴らか...!!)
「特殊部隊と言っても、この数には勝てますまい
天下のプリ―ストン卿も心ここにあらずといった様子ですからなあ」
「くそっ...!!姿を現せコノヤロー!!俺は今イライラしてんだよっ!!」
なかなか姿を現さない敵にオーリングはしびれを切らし、珍しく声を荒げた。
「ヒヒヒッ、ご苦労なことで」
しかし、声の主は不気味な笑い声を残すだけ。
すると今まで教会の方ばかりを気にしていたジンノが振り返った。
そして
〈ダーク〉ヴェーエン
と、唱えながら左手をふるう。
途端に、空気が揺れ動き、人がいるはずのないそこにある人物が現れた。
「貴様っ!!」
そこにいたのは王族四大分家フィンステルニス一族に仕える補佐官、ユーベル氏だった。
姿を見られたことに顔を青くさせるユーベル。
ジンノは冷めた目つきでその男を見つめた。
「...アホらしい...何をいい気になってやがる
お前の下衆な計画など見え見えだ、馬鹿野郎」
「な、何をッ!!?」
「ああ―...面倒くせえ......」
相変わらずダルそうなジンノはやはり教会の方をちらちらと気にしている。
しかし、今の一言は相手を動揺させるには十分だったようで。
ユーベルは悔しそうに表情を歪ませ、ジンノを睨み付ける。
吹雪が止む気配はない。
吹き付けるそれを払いながらユーベルはニヤリと口元に嘲笑を浮かべた。
「ほう...では、これを見てもそのように余裕のままでいられますかな?」
ドサッ
「!!? そんな...っ」
「......!」
ユーベルに放り投げられたそれは、力なく横たわる、セレシェイラだった。
驚愕の表情でそれをみつめるオーリング。
ジンノはわずかに驚いたようだが、その目元はサングラスで分からない。
ユーベルは自慢げにヒヒッと笑う。
「話にもなりませんなあ...まったく
虚勢ばかりを吐く姿ほど間抜けなことはありません」
ブチっと何かが切れる音がしたのは気のせいだろう。
だが、
「貴っ様あぁーーーーーー!!!」
オーリングがその怒号と共にキレたのは気のせいではなかった。
地面が揺れ、亀裂が走る。
吹雪が吹く中に雷まで落ち、
風はうなり木々はざわざわと音を鳴らした。
巨大な城までもオーリングの怒りに触れ、共鳴するように音を立てて揺れ、所々ひび割れ崩れていく。
それは王宮だけにとどまらず、王国各所でその多大な影響を受けていた。
ある場所では地震と共に火山が噴火し
またある場所では、川が氾濫
別の場所では大嵐に見舞われた。
しかしオーリングの怒りが止まることはない。



