「ルミちゃん、こっちおいで!」



オーリング─改めオーリィさんが手招きしながらそう言った。


傍に向かうとしゃがんだ彼の足元にはいくつかの枝と落ち葉が集められており、それに彼は手をかざした。


すると



ボゥッ!



「わっ……!!?」



それに突然火がついた。



「(マ、マジック...!?)」



あまりにも突然のことに目を開かせ呆然としていると、それに気付いたオーリィが驚いたように近寄ってきた。



「ルミちゃん、魔法知らない?」


「ま、魔法って、そんなものが存在しているんですか、ここには」



驚きの一言に尽きる。


ルミの中で空想上のものである『魔法』というものがここには、この世界にはある。


とうとう怪しくなってきたみたい、ここが夢なのか現実なのか。


だけど、夢であれ現実であれ。



「(もしこれが、私の運命なら...抗ってはならない…)」



その言葉が頭の中にふと過る。


いったい誰の言葉なのか、運命とは何なのか。


だいたい、運命などというものを意識して生きている人間がこの世の中に何人いるというのか。


でも、今はここで生きていくしかない。


そのうち夢が覚めるかもしれないし、ひょんなことから元の世界に戻れるかもしれない。



「大丈夫、ルミちゃん?」



濡れた衣服を乾かしながら、心配そうに尋ねるオーリィ。



「(まあ、この人もいることだし…)」



もう少し、ここで頑張ってみようと思うのだった。