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『自分の目で君の死を見たから、どうしても信じられなかった...けど、やっぱり君の中にルミの面影を感じられずにはいられなかった』
「......っ、シェイラ...さん」
白い空間に意識が戻りはっとすると、目の前には幼いころの面影をしっかりと残したシェイラがいた。
シェイラは優しくルミの頬を包み、あのころと変わらぬ笑みを浮かべている。
『ノアに聞いたんだ、あの後何があったのか』
「え、」
『時空を歪め魔力の抜け落ちた傷だらけの体を異世界へ送ったのも、十年経って君をこの世界に呼び戻したのも、ノアが君を思ってやったことらしい』
予想外の内容に、ルミは目を丸くする。
『何もノアだけの意志でそうしたわけじゃない
君の分身であるこの白亜の女神もそれを望んだ』
シェイラから少し離れた場所で、じっと様子を伺う白亜の女神に視線を移す。
最後の力を振り絞り生み出した六花蝶達は、一部はシェイラの元へ、残りは教会へと向かった。
教会へ向かった蝶達は1つに集まり、白亜の女神と言う名の意志を持った女神像になった。
意志を持った白亜の女神は、まるで帰ることのない主を待つ忠犬のように、時が来るその日まで、永遠にそこにい続ける。
そして
“時が来た”
そう感じたノアと白亜の女神はルミをこの世界に呼び戻したと言うわけだ。
「............」
全てを知り、呆然とするルミ。
シェイラは変わらず笑顔のままルミを見つめる。
本当は今すぐ抱き締めたいほどに心は高ぶっているのだが、まだダメだと必死に自制する。
ルミがきちんと自分と向き合い、真実を受け入れるまではダメだと、何度も自分自身に言い聞かせた。
そんなシェイラとは裏腹にルミは、目の前の黒いイヤリングを見つめ、それに手を伸ばしそっと触れる。
(そうだ......これ、覚えてる......)
徐々に鮮明になっていく記憶。
(初めてこれを見たとき、妙に惹きつけられたのは、これが私の魔力で作ったものだったから......)
少しずつ疑問に感じていた謎が溶けていく。
(そうだ、私はここにいた...
確かに孤独だったけど、死にたいと思うくらい辛かったけど...あの時私は、ジンノ兄さんやシェイラさんと離れたくないと思った...生きたいと思ったんだ)
ルミの目に光が戻る。
もう、そこには真実を受け止めることへの恐怖の色は浮かんでいなかった。
白亜の女神がゆっくりと近づく。
『王宮が襲われている
ジンノは先に向かった。全てが動き出す
止められる者は誰もいない』
深い藍色の瞳がルミの目を射抜くように見つめた。
『頼むルミ、私を受け入れてくれ
きっとその先には苦しみも悲しみも待ってる、だけどその全てを受け入れ許した、それがルミア・プリーストンなんだ』
お前なら出来る。
強い眼差しでそう言う白亜の女神。
怖くないといえば嘘になる。でも、
「兄さんが戦ってるなら私も行かなきゃ
あの人、すぐ暴走しちゃうから」
もう泣くことはない。
笑いながら冗談混じりにそう言った。
そして、ルミは白亜の女神に手を伸ばした
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