「使えるでしょ?」
「え、......」
「魔法」
確かに、男の子からは魔力が感じられない。
でもルミアにはわかった。
身体の奥の奥、何層もの殻に閉じ込めたその場所に彼は魔力を押し込めていることを。
「君は、魔力を使えないんじゃない
使わないようにしているだけ」
きっとそれは無意識で、意図してやってることじゃない。
「君の本能が、恐れているのよ
魔法を使う事を......誰か大切な人を傷つけてしまう事を」
私もそうだった。
どんなに人から羨まれるほどの力を持っていたとしても、何にも嬉しくない。
ルミアは自分が降らせた雪をその手に取り、静かに語りかけるように話し続ける。
「君は、この雪を素敵だと言ったけれど、私はそうは思わない」
柔らかな雪は確かに美しいだろう。
だが、
「雪は人の体温を奪い、その冷たさはやがて命を奪ってしまう。それに......」
ルミアがかざす手からは、刃のような氷の塊が出てくる。
「!!」
突然現れたそれに、目を見開き驚く男の子。
しかし、ルミアがそれを気に留めることはない。
「私は物心ついた頃から兄のような騎士になるために鍛錬を積んできたけど、いつも思うの......」
“怖い”
自分の力が人を傷つけてしまうことが。
強過ぎる力は人より何倍も気を張り、繊細に細やかに扱わなければ、ちょっとした気の緩みで沢山の人を死に追いやってしまう。
それは戦う相手も、ともに戦う仲間でも関係なく。
そこにいるだけで危険を及ぼす存在であるルミアを、人々が『化物』だと、『悪魔』だと呼ぶのは当然かもしれない。
「自分の力が恐ろしい、いつか本当に誰かを傷つけてしまいそうで......」
そう言って、白い手で顔を覆うルミアを、男の子は悲しげな表情でなんと言葉をかけていいのか迷っているようだった。
だが、すぐに顔をあげたルミアの顔は今までと同じで。
「だから、分かるの
君が魔法を使うことを無意識のうちに拒む理由が。
君と私はよく似ているから」



