櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ






つぎの日。



また、ルミアはいつもの定位置で雪に埋もれながら寝転んでいた。



すると、また視線を感じる。



昨日と同じ位置でマゴマゴしている男の子の視線を。



しかし、今日は昨日とは違い、近くの木を伝い体を隠しながらちょこちょこと近づいてくる。



一歩一歩、慎重に近づく男の子。



ルミアは何もすることなく、ただ黙って彼がやって来るのを待っていた。



だが、その一歩はあまりにも小さく



残り五メートルというところまで来たときに、昼休み終了のチャイムが鳴り響いた。



男の子はビクッと肩を揺らしたあと、あからさまに悲しそうな、泣きそうな顔をする。



がっくりと肩を落とし去っていく男の子。



ルミアはその背中をじっと見つめていた。



そしてまた次の日。



昼休みに裏庭へ行く時間が少し遅れてしまった。



男の子が気になり、いつもより少しだけ急いで向かうと



(あ、いた......)



男の子はいた。



大木の脇に座り込み、ルミがいつも居たところをチラチラと見ている。



ルミアはそっと、彼の背後から近づく。



「ねぇ、」



普段なら自分から話しかけるなんてありえない。



だけれど、この時は自然と無意識のうちにそうしてしまっていた。



だが、



「!!!!?」



男の子は、突然かけられた声に飛び上がるほど驚き、そして固まってしまう。



(失敗した...)と心の中で反省し、ルミアは男の子を構わず、定位置に向かって歩き出した。



そこに腰を下ろすと、途端にルミアを中心に辺りに雪が広がり、空からも雪が降り始める。



そこに寝転がれば、制服や頬に柔らかな雪が降りつもっていった。



白髪は雪と同化し、真っ白な汚れを知らない肌は一層白く見える。



ふと、男の子の方に目を遣ると、彼は立ち上がり一歩一歩ルミアの元へと近づいていた。



金髪と茶髪が入り交じった見慣れない髪と宝石のように輝く美しい黄金の瞳が印象的な子だった。



ルミアの前まで後三メートル。



そこまで何とかたどり着くと、彼は何か言いたげに口を開けてはつぐみ、目はキョロキョロと落ち着きがない。



そのまま、時間はどんどん進んでいく。



それでもルミアは何を言うでもなく、ただ目の前の男の子が自分から動くのを待ち続けていた。



そして



「......あ、あのっ...」



男の子がようやくその小さな口から震える声で言葉を発した。



が、



キーンコーーン────



無情にも昼休みの終を告げる鐘が、その言葉を飲み込んでしまった。



見ると、男の子の目にはじわじわと涙が溢れてくる。



そしてゆっくりと背を向け、トボトボと来た道を帰っていく。



(あと、ちょっとだったのに......)



その後ろ姿を見つめながらルミアは思った。



彼はもしかしたら明日もここに来るかもしれないと。



このままだと、確実に。



それはいい。



問題は、明日自分はいないという事だ。