櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ
















『さあ、時間がない
早く私を...私のすべてを受け入れろ』



しゃがみ込み、カタカタと震える体を必死に抑えるルミに、白亜の女神は迫る。



怯える体でルミは、考えていた。



(何で......何で、私はここに戻ってきたの...
死を選んだんじゃないの)



そう。



ルミアは孤独だった。



誰にも愛されなかったルミアは、唯一自分を兄を救う代わりに自らの死を選んだ筈なのだ。



では何故、ルミアは白亜の女神を残したのだろう。



どうして異世界に体を移したりまでして、生きる道を選んだりしたのだろう。



もっともっと、苦しくなるだけなのに。



(......いやだ............)



無意識に頭がそう訴えていた。



全てを受け入れてしまえば、本当の自分に戻ってしまう。



戻ってしまえば、また、きっと一人になってしまう。



オーリングやシルベスター



エンマにノア



兄であるジンノ



そして、シェイラ



この国に来て、優しく迎えてくれた人達。



名を呼んでくれる大切な人達が離れていってしまう。



ジンノだって、自分を死の淵まで追い込み左目を潰した元凶のルミアを本当は恨んでるかもしれない。



あの心の優しいシェイラだって......



『ルミ、早く...時間が...』



「......いやだっ!」



『!?.........ルミ』



涙に濡れる顔を振り上げ、思いのままに叫ぶ。



その姿見て、白亜の女神は驚き後ずさった。



表情は悲しみで歪んでいた。



《... 運命に抗うな。例えそれがどんなに辛く悲しいことで、信じられない程に悲痛で苦しい結末でも、抗うことは許さない。それが運命だというならば...
 思いのままに謳え、思いのままに躍れ
 思いのままに...それを...運命を、全うしろ》



白亜の女神が言った言葉が......いや、自分自身が言った言葉が、頭の中で何度も繰り返される。



それでも



(怖い......っ)



もう、一人になりたくない。



一度、幸せを知ってしまったから。



震える体と溢れる涙は止まることはなかった。