それは
シェイラが初めて
自身の魔力のついて
自分の口で
自分の意思を述べた
瞬間だった
魔法が使えない王族だと
《偽りの王》だと
どれだけ人に
忌み、嫌われようと
けして口に出そうとしなかったことを
初めて
シェイラは言ったのだ
シェイラはもう一度ノアに触れる。
「大丈夫、信じて......解きなさい」
その優しい声に従うように、バリアのひび割れが全体に広がり始める。
そしてシェイラは、ジンノを見ることなく、ポツリと呟くように言葉をこぼした。
「......もう、逃げないと決めた
大切なものを守るために......もう何も、失わないように」
だから
「国を...兄さんを頼む......」
懇願に近いそれがジンノの耳に届く頃には、バリア全体にヒビがいきわたり、今にも壊れそうな状態になっていた。
「セレシェイラ様っ!!もう、壊れます...っ」
ノアの緊迫した声が響く。
シェイラは安心させるようにノアに手を置いたまま、空いた手を今にも割れそうなそれにかざす。
その瞬間
空気が変わった。
教会内にある空気が渦巻き、シェイラを中心に円を作りはじめる。
茶髪と金髪の織り交ざった髪がザワザワとゆれる。
それと同時に、今まで感じることのなかった、異質の魔力がシェイラの体から溢れ始めた。
(これは......っ!!)
魔力と空気がその濃度差故に、混ざり合うことなくその狭間がゆらゆらと揺らめく。
黄金の瞳が一層、その輝きを増した。
そして
「待っててね、ルミ......すぐ、そこにいく......」
そう、シェイラがつぶやいた瞬間
バリアが音を立てて崩れ落ちた。
中から物凄い冷気を帯びた魔力の塊が、辺りを凍らせながら迫り来る。
残り数十センチ
もう少しでその魔力の波に飲まれるという時だった。



