櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ





それは



シェイラが初めて



自身の魔力のついて



自分の口で



自分の意思を述べた



瞬間だった







魔法が使えない王族だと



《偽りの王》だと



どれだけ人に



忌み、嫌われようと



けして口に出そうとしなかったことを



初めて



シェイラは言ったのだ






シェイラはもう一度ノアに触れる。



「大丈夫、信じて......解きなさい」



その優しい声に従うように、バリアのひび割れが全体に広がり始める。



そしてシェイラは、ジンノを見ることなく、ポツリと呟くように言葉をこぼした。



「......もう、逃げないと決めた
大切なものを守るために......もう何も、失わないように」



だから



「国を...兄さんを頼む......」



懇願に近いそれがジンノの耳に届く頃には、バリア全体にヒビがいきわたり、今にも壊れそうな状態になっていた。



「セレシェイラ様っ!!もう、壊れます...っ」



ノアの緊迫した声が響く。



シェイラは安心させるようにノアに手を置いたまま、空いた手を今にも割れそうなそれにかざす。



その瞬間



空気が変わった。



教会内にある空気が渦巻き、シェイラを中心に円を作りはじめる。



茶髪と金髪の織り交ざった髪がザワザワとゆれる。



それと同時に、今まで感じることのなかった、異質の魔力がシェイラの体から溢れ始めた。



(これは......っ!!)



魔力と空気がその濃度差故に、混ざり合うことなくその狭間がゆらゆらと揺らめく。



黄金の瞳が一層、その輝きを増した。



そして



「待っててね、ルミ......すぐ、そこにいく......」



そう、シェイラがつぶやいた瞬間



バリアが音を立てて崩れ落ちた。



中から物凄い冷気を帯びた魔力の塊が、辺りを凍らせながら迫り来る。



残り数十センチ



もう少しでその魔力の波に飲まれるという時だった。