櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ






そんな時だった。



彼が現れたのは。



バンッ



不意に、吹雪が入り込んでいた扉が閉じた。



あまりに唐突な出来事に、ジンノは驚いたように振り返る。



急に静まった教会にギィ──と、扉が再び開く音が響いた。



「お前......っ!」



もう吹雪は入り込んでは来なかった。



その代わり、真っ黒な闇を背にこちらへ歩いてくる人が一人。



それは王族のマントを羽織る、第二王子セレシェイラ・フェルダンだった。



恐らく影の空間を通ってやってきたのだろう。



ジンノの目の前に対峙するシェイラ。



「ルミはどこだ」



「.............」



躊躇うことなく本題に入るシェイラを、ジンノは何も答えることなく睨むように見つめる。



暫し、睨み合う二人。



しかし返答はないと判断したシェイラはすぐにその場から離れ、ノアの元へと向かった。



「ノア......ルミはあの中なのか?」



一際大きさを増した氷に包まれたドームを見つめ、そう尋ねる。



「はい......ですが、もう...っ!!!」



ノアが答えている最中に、ドームを囲む透明なバリアが音を立ててひび割れる。



おそらく限界が来たのだろう。



険しい表情のノアを安心させるように、シェイラは優しく微笑み頭を撫で、言う。



「もう大丈夫、これを解きなさい」



その言葉を聞き、ジンノの表情はさらに険しくなった。



「おい」



声をあげ、シェイラの肩を掴む。



それに反応し振り向いたシェイラの表情は固い。



「......ルミは俺に任せて、ジンノは今すぐ王宮に帰って
まずいことになってる...兄さんを守ってくれ」



ジンノは頬をぴくりと引きつらせる。



「......国がどうなろうが知ったことじゃない
俺にとってただ唯一、大切なのはルミアだけだ!
そんな俺に...王宮に戻って、ルミアを置いてけだと?
......ふざけんな!!」



声を荒らげるジンノ。



しかし、シェイラは硬い表情を少しも変えない。



そのことにジンノはさらにイライラを募らせる。



「...それに、ノアの力が解ければ中に充満した魔力が一気に外に溢れ出て、一歩間違えれば爆発ものだ
魔法も使えんやつにここを任せられるわけないだろう」



「......!」



すると、その言葉を聞いたシェイラがわずかに表情を変え、ふいっと顔を背けた。



そして



「俺は、魔法を“使えない”んじゃない



......魔法を“使わない”だけだ」