櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ










その頃。



「おい、これ何だか分かるか?」



「いえ......でも、ルミは確実にこの中でしょうね」



教会に残されたジンノとノアは、目の前に現れたものを呆然と見つめていた。



ルミが白亜の女神と共に光に包まれた次の瞬間に現れた白いドーム。



正確には膨大な魔力の渦巻くドーム。



あまりにも強大な魔力を放つそれは、近くにいる者にさえ影響を与える。



そのドームから三メートルほど離れたところに立つジンノも肌がビリビリと痛み、これ以上近づく為には覚悟をしなければならない程。



ただの魔法使いやまして普通の人間であれば、ジンノのいる場所にくるまでで既に失神してしまうだろう。



しかし、ジンノとノアはこれ以上は引かない、そんな顔をしてそれと対峙していた。



(この感じ...この匂い......ルミアの魔力であることは間違いないが......一体中で何が...)



腕を組み仁王立ちの状態でそんな事を考えるジンノに、ノアは鋭い角を持つ小ぶりな頭を擦り付ける。



ジンノはそれを受け入れるように何度も撫ぜたり、顎を掻いてやったりする。



気持ちよさそうに目を閉じてそれを受け止めるノア。



男嫌いのノアだが、ジンノは別。



「お会いしとうございました」



「......久しぶりだな...今までどこに行っていた?」



「...東の果てまで」



「そうか......寂しかったぞ、割と」



伏し目がちのノアと微笑を浮かべながら話すジンノ。



互いに再会を喜ぶその光景は緊迫したこの場に似つかわしくないほど美しくそして穏やかだった。



その時。



パキ──



「!?」



パキ、パキ───



ドームを中心に周りが凍り始めた。



ジンノとノアは迫り来るそれから後ずさりしながら距離を取る。



急速に氷結化していく辺りを見回し、後ずさりし続けるジンノ。



(どうした、ルミアっ......!!)



何がどうなってこんな状況に陥っているか把握できず、困惑する。



すると



バンッ!!



「っな......ッ!?」



突如教会の扉が音を上げて開き、外から猛吹雪が入り込んできたのだ。



顔を腕でかばうが体を打ち付ける雪が急速に熱を奪う。



あっという間に銀箔の世界に変わっていく。



ドームは徐々にその大きさ増し、ドーム自身も氷で覆われ、同時に魔力も先ほどの倍以上に上がり始めた。



「くそっ......! このままじゃ......!!」



このままでは教会だけでなく、ここら一体の民家を簡単に巻き込んでしまう。



そう判断したジンノは吹雪と魔力の圧力に耐えながら「ノアっ!!」と叫んだ。



瞬時にジンノの考えを察したノアは、体をブルブルとふるい雪を払ってジンノの前に進み出る。



次の瞬間、ノアの角が眩く輝き始めた。



そして



ドームをさらに囲むように一回り大きく透明なドームが張り始める。



徐々に白いドームから滝のように溢れ出る魔力が弱まり始めた。



しかし吹雪は勢いを弱めることなく、逆に強くなっていた。



「っ!! 流石、ルミ...あまり長くは持ちませんっ......」



ノアは険しい表情でジンノそう訴える。



勿論ジンノはそれをわかってノアに一時的にでも魔力を弱めるように頼んだのだ。



どうやってこの状況を乗り切るか考える時間を得るために。