◇
「...何、これ......」
ルミの意識が、白亜の女神のいる白い空間にもどる。
ただでさえ白いその顔は一層蒼白になり、額には玉のような汗が浮かんでいた。
目を大きく見開き、カタカタと小刻みに震えるルミ。
その様子を白亜の女神はじっと見つめる。
『分かっただろう?
これがお前の知りたかった事実
これが、お前の生きた記憶なんだ』
「っ!そんな......」
元いた世界でも、いつも一人だった。
それでも、特に悲しいとか寂しいとかそんなことは感じなかった。
どんなに理不尽な理由でいじめられようと心を痛めることはなかったのに。
じんわりと大きなその目に涙が溢れてくる。
それに追い討ちをかけるように白亜の女神はしゃがみこむルミに向かって言う。
『お前はいつも一人だった
実の親に見放されて挙句悪魔とまで呼ばれ
学校では化物と恐れられた
誰もお前を人として扱うことはなかった
兄ジンノを除いて、誰一人として......命が尽きるその瞬間までね』
「っ......!やめてっ......」
ルミは唇をかんで、すべてを拒絶するように両手で耳を塞ぐ。
それでもなお、白亜の女神は止めることなくルミに現実を突きつける。
『お前はもう、嫌だった...逃げ出したかったんだ
自らの苦しみから、死をもってね』
殺人鬼はルミを弄ぶだけ弄んで、まるで遊び飽きてしまったおもちゃのようにボロボロになるまで切り裂き殴りつけて捨てたのだ。
もちろんルミはいっさい抵抗しなかった。
ジンノを庇い、殺人鬼について行ったその時からそう覚悟していたから。
むしろ、それを望んで。
『お前は私を切り離した
苦しみから逃げ出すために......
私は.........お前の“記憶”と“魔力”の塊そのものだ』
「!!」
生きることに疲れたルミアは、苦しみに溢れた自身の“記憶”と人々に畏怖の目で見られるその根源となった膨大な“魔力”その二つをこの世界に残し、空っぽになっ体だけを別の世界へ移したのだ。
逃げるようにして。
『苦しみ、悲しみ、諦め、憎悪、虚しさ......
その全てで作られたのが私
そして...お前だ
さあ、私の全てを受け入れろ
それでお前は...ルミア・プリーストンは完成する』
白い空間に女神の声とルミの震える息遣いだけが響いていた。



