草木の間をどんどん進んでいくオーリング。


私一人だったら絶対に迷う!と思いながら、その後ろ姿を早足で追いかける。



「はぁっ、ちょっ、オーリングさん、待ってっ!」



道とは言えないほどの、慣れない獣道に息が切れてしまう。


ルミよりもずっと先を歩いていたオーリングは、その声に気付いたのか振り返って大慌てで私の元まで戻ってきた。



「うわあ、ごめん!!
うっかり自分のペースで歩いてた、ごめんなあ〜!」



本当に申し訳なさそうにオロオロしまくっている。


彼の様子を見ていると、こんな私でも少しだけ笑えそうな気がするから不思議。



「すいません、迷惑かけて。もう大丈夫です」


「そう?もう少しで着くからね。頑張ろう!」



心配そうな顔で笑いながら、背を押してくれる。


多分この人は、本当に心根の優しい人なのだろうと思う。若干うるさくはあるが。

 
少し行くと川のせせらぎが聞こえてきた。



(あ……キレイ…)



木々の間から見えてきた小さな川。


森を歩いている間はあまり気付かなかったが、やはり今は夜だった。ただの暗闇ではなく。





私は言葉を失った。



満天の星空とあまりに美しい月が夜空に浮かぶ。


まるで、絵に書いたように幻想的な風景だった。


川の水は夜の闇の中でもしっかりと分かる程に澄んでいて、夜の光たちが反射しキラキラと輝く。


心を奪われるというのはこういう事なのだろうか。




「綺麗だろう」


オーリングが静かに口を開く。


「ここはさ、俺のお気に入りなんだ。
昼間の森も好きなんだけど、やっぱり夜のこの森は別格」



気に入ってくれた?と笑いながら尋ねてくる。「はい…」と無意識のうちに答えていたのだった。