白亜の女神像についてルミが知ってから3日。



ルミの主治医達からようやく外出許可を得たルミは、ジンノとノアと共にその女神像の元へと向かおうとしていた。



頻繁に病室へ見舞いに来ていたシェイラやオーリングも着いて行くと言って聞かなかったのだが、王族である二人はそう簡単に外に出るわけにもいかず、結局このメンバーで行くことになったと言う訳である。



そうでなくても、ジンノは二人を連れていく気は一切なかったようだが。



それを知ってか知らずか、ルミは呑気に「シェイラさんやオーリィさん達も一緒に行けたら良かったのにね」などとノアに話しかけている。



(人の気も知らないで...まったく)



ジンノはハアと溜息をつく。



しかし、次の瞬間には顔を上げ、いつもの調子に戻っていた。



「じゃあ、行くか」



「あっ、はいっ! ほら行こう、ノアっ」



「ああ」



ルミを背に乗せ、ジンノを先頭にノアは歩き出す。



だんだんと離れていく王宮。



ノアの背の上で、ルミはシェイラのことを考えていた。



(大丈夫かな...シェイラさん...)



病室を出ることが出来るようになってから、少しだけ王宮の中を運動もかねて歩いた時に知ってしまったのだ。



シェイラがこの国であまりいい扱いを受けてない事を。



王子であるにも関わらず、王宮の中で働いている人達から《偽りの王》と呼ばれていることを。



どうしてそう呼ばれているかまでは分からない。



だが、何となくシェイラが姿を隠していたその理由が分かった気がした。



どんなに不躾な視線を送られ、陰口を叩かれ、存在を無視されようと顔色ひとつ変えずに歩くシェイラの後姿。



それを目にして、なんて強い人だろうと、そう思ったと同時にその背中が泣きそうなほど孤独と寂しさに震えていたように見えた気がした。



ルミの前では明るく笑顔で元気そうに振舞うシェイラ。



今も孤独の中で戦っていると思うとこの場を自分が離れる事を躊躇ってしまう。



しかし、このままの自分ではシェイラのそばに居れたとしても、支える事は出来ないし勿論守る事なんてもっての外。



(私は、守りたいんだ...)



そばに居るだけじゃ何にもならない。



その為にはまず、自分を知らなければ。



─────《白亜の女神》の元へ



頭の中に響いた声が、今もまだ残っている。



自分と同じ姿をした《白亜の女神》と名乗る人。



(行かないと......行けばきっと、何かが変わる)



そう信じてルミは前を向き、ノアと共にジンノのあとを追った。