バタンっ!



「ま、待って! シェイラさんっ!!」



急いでシェイラの後を追うルミ。



病室から少し離れたところに驚いたように振り向くシェイラとアルマ、エルヴィスの3人がいた。



ハアハア吐息を乱しながら駆けてくるルミを目にし、慌てたようにシェイラも駆け寄る。



「どうしたんだ、安静にしてないとダメじゃないか」



案の定、急に動いた為目の前がぐらつき貧血を起こしたようにふらつき倒れるルミを、シェイラが慌てて支える。



「はあ、はあ......ご、ごめんなさい......」



乱れた呼吸を整えると、ルミはばっと顔をあげ、尋ねた。



「......ふぅ......あの、シェイラさんは《白亜の女神》ってご存知ありませんか?」



「白亜の女神?」



覚えがないのか、シェイラは首を傾げる。



しかし、エルヴィスが何か思い当たったように声をあげた。



「白亜の女神像、なら知ってるけど?」



白亜の女神像



それは乳白色のクリスタルで出来た女神像。



十年前、それは王都の下町の小さな教会に突然現れた。



誰がそれを作り、誰がそこに置いたのかは分からない。



等身大のそれは静かにそこに佇んでいた。



美しい女神像は瞬く間に有名になり、人々は天からの贈り物だと敬い奉った。



そして、今現在も尚。



「それはどこにあるんですか!? 私、そこに行かなきゃいけないんです!!」



焦ったようにそう言うルミをシェイラ達3人は目を丸くして見つめる。



「何処って......たしかあそこはジンノ様の......」



「うちの教会だよ」



場所を言いかけたアルマを遮るよう、低い声が病棟の廊下に響いた。



「ジンノさん!」



そこには数時間前に病室を出ていったジンノが、オーリングと共に立っていた。



「ルミちゃん! 元気そうでよかったよー!
ずっと会いたかったんだけど、口煩いジジイたちがなっかなか自由にしてくれなくてね」



ルミの元に駆け寄り、満面の笑みで話しかけるオーリング。



「オーリィさんこそ、無事で本当によかったです
......それよりジンノさん、今の話、本当ですか?」



心配していたオーリングに会えたことが嬉しいのだが、今はジンノの話の方が大事。



勢い余ってルミに抱きつくオーリングを簡単に流しながら、ジンノに尋ねた。



ジンノはオーリングを睨みつけルミから引き剥がしながらそれに答える。



「ああ、うちの教会にそれはある
神父がいなくてな、もう何年も教会自体は閉めているが、白亜の女神像がある大聖堂だけは今も週に一度開放するようにしている
......女神像がどうかしたのか」



訝しげにそう聞くジンノ。



その彼に首根っこを掴まれているオーリング。



二人を気にしつつ主の後ろに構えるアルマとエルヴィス。



そしてルミを気遣わしげに見つめる二人の現主のシェイラ。



普通の人であれば竦んで怯え上がるほどの五人の男性陣の中で、ルミはすっと立ちあがり、ジンノの瞳をまっすぐに見つめて言う。



「ジンノさん、いえ......お兄さん、私をそこへ連れていってくれませんか」



会わなきゃいけない、人がいるんです。



懇願するように訴えかけるルミに、ジンノは小さくけれどしっかりと頷いた。