その途端
ジンノに抱きしめられた時にも感じた、けれどそれとは異なる懐かしい香りがふんわりと鼻腔をくすぐった。
それと同時にルミの背に腕が回される。
「どしたの? ルミ」
頭上から、ついさっきまで聞きたかった声が降ってくる。
ばっ、と顔を上げると、そこには可笑しそうはにかむシェイラが、ルミを抱きしめるような形で立っていた。
「シェイラさんっ!? どうしてっ
影の部屋から出ちゃいけないじゃないですか!」
ルミもエンマからそうきつく言われていたからこそ、自ら影の部屋に向かおうとしていたと言うのに。
そんな焦るルミに対し、シェイラは困ったように笑う。
そしてルミの頭を優しくなでながら
「もう、いいんだ......いいんだよ」
そう言って、一際優しく微笑んだ。
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「怪我はもう大丈夫みたいだね、良かった」
ルミをベッドに腰掛けさせ、労るような声をかける。
「シェイラさんこそ、体大丈夫なんですか?」
「ああ、ルミのおかげでね」
力こぶを作る真似事をやり自分が元気だと主張するシェイラ。
でもなかなか不安が拭えないのは当然。
疑うような眼差しでシェイラを見つめていると、苦笑いでルミの頭を撫でた。
「本当に、もう大丈夫だから」
細く色白の、でもやはり男らしい大きな手が頭の上を行き来する。
(また、撫でられた......)
首を引っ込めるようにして嫌がることもなくそれを受け入れながら、撫でるのが好きなのかな、などとぼんやり考えていた。
その時視界に、シェイラの左耳の黒いイヤリングが入る。
キラキラと光を反射するそれは、短く切らり揃えられた茶髪と金髪の織り混ざる髪の中で妙に存在感を放っていた。
(影の部屋にいる時は、あんなのしてなかった......)
似合っているだけにどうしてこんなに意識が向くのか自分ても分からない。
それにしても、美しい。
「......っ!! ルミっ......」
気付けば、それを見るために、身を乗り出していた。



