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シルベスターのいた王宮の王室からしばらく歩き、病棟へと入った三人。
王宮内で不躾に浴びせられていた視線は、こちらではあまり感じられない。
人が少ないのもあるが、やはり彼等が命を救う事を仕事としてることは大きいだろう。
命の大きさなど皆同じで、人によって価値が変わるものでもない。
人を命の塊として考えている彼等からしてみれば噂に流される人々もその噂の中心に立つシェイラも何も変わらないのだ。
シェイラを先頭に三人が白塗りの廊下を歩けば、看護師たちや医師達は、立ち止まって静かに頭を下げるだけ。
その中をシェイラ達はただまっすぐ歩き続ける。
(なぁ、アル。陛下はどこに向かってんの?)
こそりとエルヴィスはアルマに尋ねるが、分からないのか首を横に振るだけ。
二人はシェイラの後を黙ってついて行く。
そして、ようやく、シェイラは立ち止まった。
シェイラはじっと先を見据えている。
一体何なのかと、アルマとエルヴィスが同じように先に目を遣ると、少し先の病室の扉が静かに開いた。
「じゃあな、また来る」
「はい。待ってますね」
「ああ、それじゃ......」
扉の隙間から漏れでる声と、扉から姿を現すジンノ。
その表情は、三人が闘技場で見た時よりもずっと穏やかで、柔らかで、愛しいものを見るそれのようだった。
補佐官としてそばにいることの多いアルマでさえ、一瞬、他人の空似かと思ったほど。
しかし、扉を出てその黒い目がシェイラを確認した途端、表情は一変。
冷たく鋭い、何者も受け付けない冷酷なものに。
扉を閉め、こちらに向かって歩き出すジンノに対し、シェイラも歩き出し、そして、向き合う。
「............お久しぶりです、セレシェイラ陛下」
わざとらしくジンノがそう言うと、
「......別にいいよ、無理して敬語使わなくても」
シェイラは向き合ったまま、小さくため息をついて、疲れたようにそう返す。
その言葉にふっと鼻で笑い、やはり冷たい瞳でシェイラを見下ろすジンノ。
「ああ、それもそうだ
そういやお前に敬語なんか使ったことなかったもんなあ」
(ジンノ様っ!?)
仮にも王子に対してそんな口の聞き方をするなんて。
アルマとエルヴィスは驚愕の表情を浮かべる。
しかし、向き合う二人はそんなことは気にしない。
「八年ぶりのお出ましか、死んだ振りまでして大層なこった で?こんなところに何のようだよ、負け犬」
「............」
嫌味たっぷりの台詞。
王子を負け犬と呼ぶとは、流石のアルマもジンノに突っかかる。



