◇
「......ゆっくり休んでください、では失礼します」
パタン
静かに扉を閉め、二人を引き連れてシルベスターの部屋を出ていくシェイラ。
王宮と病棟を繋ぐ長い回廊に三人の足音が響く。
大丈夫だと断ったのだが、シルベスターは連れていかないと許さないと強制的にアルマとエルヴィスを付けさせた。
無言の時間が長く続く。
それをはじめに破ったのは、アルマだった。
「......あの、少しいいでしょうか?」
「?」
突然声をかけられ、シェイラは立ち止まり振り返る。
エルヴィスも困惑したようにアルマを見つめる。
そして、アルマは少し考え込んだようにした後、思い切ったように口を開いた。
「セレシェイラ陛下の......あの噂は本当ですか?」
「! アルッ!!何を......!?」
信頼する従兄弟の、とんでもない発言に目を剥くエルヴィス。
誰もがあえて触れなかった事に、アルマは真っ向から切り込んだのだ。
必死に止めようと二人の間に入り込もうとするが、それをシェイラは手を伸ばして止める。
「......いいんだ。続けて?」
シェイラの柔らかい声が、アルマにかけられた。
「私は別に、噂を信じているわけではありません。そんな不確かなものに耳を貸すような馬鹿な真似はしない。自分の目で見て、耳で聞いて、自分だけを信じてこれまで生きてきたんです。
だから、知りたい。噂の真実を。陛下の口から、ちゃんと聞いておきたいんです」
アルマの真摯な瞳が真っ直ぐに、シェイラの黄金の瞳を貫く。
そこに嘘偽りはない。
アルマの言葉を黙って聞いていたシェイラは、小さく自嘲的に笑った。
その姿をアルマは表情を変えずにジッと見つめる。
自分より若い魔法使いの真実を見つめようとする強い眼差し。
「......君みたいな人が、あの時、俺のそばにいてくれたら......少しは変わっていたのかもしれないな......」
ぽつりとシェイラはそんな言葉を零していた。
おそらく、それは本心からの言葉で。
アルマとエルヴィスはそれを呆然と見つめる。
そんな二人に向き直り、シェイラは毅然とした表情で告げた。
「違うよ...噂は、本当じゃない」
と......



