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「............ぇ、兄上!」
「! え、あ、うん......すまん」
当時を思い出し、ぼんやりとしていたシルベスターは、シェイラに何度も名を呼ばれてようやく我に返る。
呆れたような視線を感じつつも、シェイラはそんな兄を見つめて心配そうに口を開いた。
「人の心配ばかりしていないで、兄上こそ、体の方はもう大丈夫なんですか?」
「ああ。俺は大丈夫だよ」
そう言って微笑む兄をシェイラはじっと見つめる。
体は大丈夫だろう。
だが
(......魔力が、感じられない)
全くないというわけではないが、体から発せられる魔力が微弱しか感じられないのだ。
おそらく、二度目に命を狙われたときに受けた攻撃によるのだろう。
元気な様子を装ってはいるが、ベッドから起き上がることも億劫なのかもしれない。
浮かない顔のシェイラ。
心配かけまいと気丈に振る舞い続けるシルベスターだが、シェイラには全て見抜かれていると感覚的に分かっていた。
(昔から、シェイラには嘘つけないからなぁ......)
だが、今は自分の事よりも弟の事の方が大事。
「一時的に、この二人を護衛としてお前のそばに置くことにした」
アルマとエルヴィスを目で指しながらそう言うと、シェイラは頭を下げる。
「ありがとうございます。でも、大丈夫です
......もう、あの頃とは違いますから」
その言葉にシルベスターは瞳を見開く。
「...もう...一人じゃ、ないですから...」
顔を伏せ、そう呟いたシェイラは、自身の細く白い手をグッと握りしめた。
そして、顔を上げる。
「......兄上には、感謝してます。あの時、貴方は俺を救ってくれた......今度は、俺が、兄上を助ける番です」
「! ......シェイラ」
そこにはシルベスターが何年も目にすることの出来なかった、目にしたくても出来なかった、シェイラの、本来の優しい笑顔が浮かんでいた。



