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「おい、本物かよ」
「見間違うわけないだろ、あの瞳は王族のものだ」
「だからって......」
「でも、国王陛下が認めたんだろ?」
「それ本当か??」
「間違いない。エルヴィス補佐官に聞いたから」
「国王陛下が認めたんなら違いないだろ、ご兄弟だからな」
「一体、今までどこで何をされていたんだか......」
「確かになあ。姿をくらませて八年になる筈だが」
「にしても無責任だよなー。自分の立場が悪くなったからって逃げ出したくせに、兄貴の足元が危うくなったから戻ってきたんだろー。流石、『偽りの王』......」
「おいっ!!」
カツン、カツン......
「............」
また、衛兵たちが騒いでいる。
昨日からずっとこの調子だ。
目の前を通れば、一応の敬礼はするもののその目は疑いに塗れている。
そんな目で忠誠を誓えるはずもないだろうに。
先程まで会っていた大臣たちもそう。
表面上は、生きていた王子に喜んでいるように振舞っていたが、ほとんどは冷めた目付きで自分を見ていた。
そして、その誰もが影で口を揃えて言う。
『偽りの王』と。
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セレシェイラ・フェルダン
フェルダン王国の消えた第二王子がそう呼ばれ始めたのは、八年よりさらに前。
久しぶりに歩く王宮の回廊に、シェイラの足音だけが静かに響く。
突き当たりに現れた大きな扉の前に立ち、コンコンと軽くノックすると、「どうぞ」と中から男性の声が。
静かにその扉を開け中に入ると、ベッドに横たわるシルベスターが手を挙げていた。
「シェイラ、こっちだこっち。早く来い」
ベッドの傍らにはクラウド家の補佐官。
第二王子の姿を目にすると揃って敬礼をとるアルマとエルヴィスはシェイラの知らない若い魔法使い。
だが、ジンノやオーリングに仕えているのだから、おそらく優秀なのだろう。
それ故か、今までの衛兵や大臣達とは違う眼差しで自分を見ているのを肌で感じていた。
シェイラはシルベスターの元へと足を運ぶ。
シルベスターに会うのはあの日以来、これで三度目。
はじめ、八年ぶりに顔を合わせたときは、シルベスターは目を見開き、驚きに声も出ない状態だった。
無理もない。
シルベスターは、シェイラを影の部屋へと誘い、そこに閉じ込めた張本人なのだから。



