ああ
この人は......
ずっと、苦しんでいたんだ
(私のせいで...)
いや
誰のせいでもない
細く白い自らの手をジンノの頬へと伸ばす。左目を隠すように下ろされた長い前髪をそっとその手で退かし彼の肌に優しく触れた。
左目付近の皮膚は火傷をした様にただれ、変色している。
ジンノは左目を見せたくないのか不器用に片眼を閉じてしまう。
しかし、
「......大丈夫。見せて.........」
優しくそう問いかけると、一瞬悩んだ素振りを見せつつもゆっくりと目を開いていってくれた。
瞳はなく、赤黒いただのガラス玉のような眼球。
そこにはもう右目にある様な漆黒の瞳はない。
見る力を失ったそれを、私は黙ったままじっと見つめていた。
私のために戦い、そして失ったもの。
ガラス玉の目はもう、何も映すことはないのだろう。
目元にそっと触れ、
「痛む...?」
と、尋ねると
「いや、もう痛みはないよ......」
そう小さく笑いながら、ジンノは答える。
それでも、当時はきっと命を落とすほどの苦痛を味わい、生死の狭間をさまよったことだってあったに違いない。
苦しんで苦しんで、そして今も尚苦しんでいたジンノ。
ルミは、そんな彼に手を伸ばす。
彼の顔を両手で優しく包み込み、柔らかな眼差しを向けて言う。
「兄さん......」
それは、何も考えずに自然と出た言葉。
だけど、きっと、ずっと彼に伝えたかった言葉。
「生きててくれて、ありがとう......」
私のせいで傷つけてごめんとか、長い間苦しませてごめんとかそんな言葉よりも
もう一度会えた事が何よりも嬉しかった。
生きて、もう一度触れられたことが何よりの幸せだった。
だから、『ごめん』よりも『ありがとう』を貴方に。
自分を思い続けてくれた唯一無二の家族に。
心から微笑みながら伝えるのだ。
また、あなたに会えたことが何よりも幸せなのだと。
その時はもう、私の中でジンノが兄であるということに何の疑いもなかった。
「ルミアっ......っ、......ぅっ」
ジンノの表情が歪む。
今まで抑えてきたものが崩れ落ちるように、彼の瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
頬に幾筋の跡を残しながら、それはポタポタとベッドの上を濡らしていく。
ジンノの涙に濡れる顔をそっと引き寄せる。
首元に顔を埋め、静かに嗚咽を漏らす実の兄を、ルミは優しく抱きしめた。
自らの瞳を、家族に出会えた喜びで濡らしながら
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