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「............ぅん...」
重い瞼が上がり、隙間から光が差し込む。
久し振りのそれは少しだけきつい。
眉をしかめながら、少しずつ瞼を開いていった。
(白い壁......見た事、ある)
見覚えのある白塗りの天井が目の前に広がる。
かすかに臭う薬品の香りで、ここが以前いたことのある病室である事が何となく分かった。
酷く長い間、眠っていた気がするのは気のせいだろうか。
頭がボーッとする。
頭を押さえ、清潔そうなシーツの引かれたベッドから起き上がった。
その時、ようやく気づく。
自分が横たわるベッドの傍らに人がいることに。
(誰??)
眠っているのだろう。
そばの椅子に座ったまま、ベッドに上半身をもたせ掛けるようにして腕を組み、そこに顔を埋めている。
オーリングでも、シェイラでもない。この国ではあまり見かけない、漆黒の艶やかな長髪が印象的な男性。
髪の隙間からその顔を除く。
(わあ......綺麗な人......)
黒髪だからてっきり和の雰囲気の人かなと思っていたが全然違う。
鼻筋は通っていて、彫りも深い。
完全に外国人の顔だ。
(この国の人って皆、こんなにかっこいいの??)
オーリングを始め、シェイラも国王シルベスターも、自分の知る親しい男性たちは世に言うイケメンばかり。
(でも、何だろう......)
何故だかこの人は、何処かで会ったような変な感じがするのだ。
今までに感じたことのない、不思議な感じ。
両手を自分の両頬に添え、じーっと、静かに眠る彼の顔を見つめる。
記憶の中に彼の何かを探すように。
暫くそうしていると、彼の眉がぴくりと動く。
「ん......」
小さく唸りながら、頭をあげ、ゆっくりと目を開ける男性を、先程より少しだけ離れて見ていた。
開いた目から覗く冷たく黒い瞳がルミを捕えた瞬間、びくりと自分の体が強ばる。
「............!!」
しかし、その表情は見る見るうちに柔らかいものへと変わってゆき
「ルミア...」
優しく、名前を呼んだ。
そして、彼の逞しい腕がゆっくりと私を抱き締める。
その腕の中は温かくて、安心感に溢れていて。
自分の腕を彼の背に回しながら
(やっぱり、私知ってる...この人の事)
そう、確かに感じた。
回した腕に力を込める。
気付けば
ルミの頬を、涙が伝っていた。