パキンッ
何が起こったのか。
その場にいる全員が、一瞬の出来事に言葉を失った。
シェイラの目の前。
後1メートルもすれば、届いていただろう。
その場所に弾丸があった。
氷の壁で行く手を阻まれるようにして。
(もしかして......ルミちゃん?)
オーリングが辛うじて動かせる目だけで、壁際に寝かせたルミを見る。
ジンノも慌てたようにルミを見た。
そこには
(ルミ......!!)
淡く光りだす、ルミがいた。
目は覚めていないのだろう。壁の寄りかかったまま、その髪が光り、色素の薄い髪はじわじわと完全な白髪へと変わっていく。
(まだか......)
まだ、完全ではない。
ジンノは再び、シェイラへと魔導銃を向け、引き金に指をかけた。
それを引こうとした瞬間。
ギイィン!
「あっ......魔導銃が!!」
ジンノの魔導銃が弾き落とされた。
ビュッ
同時に、ジンノに向かって氷の刃が振り落とされる。
瞬時に避けたものの、頬を氷の刃が掠めた。
余りに速い攻防だった。
いつの間にかオーリングにかけられていた魔法も解け、その戦いをあっけに取られたように見つめる。
あのジンノが防戦一方に転じている。
信じられない光景だった。
ガッ!
「グゥっ!!」
美しい白髪が舞い、 ジンノの体を蹴り上げる。
「──ゲホッ............ハハッ!」
蹴り飛ばされたというのに、ジンノの笑う。それは嬉しそうに。
「ルミア!!!」
ジンノが名を呼ぶ。
氷の刀を持って佇む白髪の子に。
まだしっかりと覚醒していないのかその目はぼんやりとしている。
しかし、ジンノの声を聞き、少しずつ瞳に力が宿る。
顔を上げ、目を見開きこちらを見るその姿に、オーリングとジンノ、そしてシェイラも思わず見惚れた。
先程よりも長く伸びた雪のように美しい白髪。
白磁のように艶やかな肌と、しっかりとした目鼻立ち。
紫陽のように深い藍の大きな瞳が、ジンノを写し
紅で塗ったような赤い唇が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「兄...さん......?」
待ち望んだ言葉を聞けたというように、喜びの表情を浮かべるジンノ。
「ルミア......!」
再び名を呼んだ。
すると
「兄さん!」
白磁の肌にぽっと火が灯るように、頬が染まる。
ジンノの顔にも、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。
そして、二人は駆け寄った。



