櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ





(何でここにっ!!?)



オーリングの心情は全く穏やかではない。



今までずっとシェイラの傍に居続けた。



シェイラが、親を失い一人だったオーリングを救ってくれたから。



幼くしてたった一人になった自分をそばに置き支えてくれた。



だから今度は自分が、そう思って、守りたくて、シェイラの為に生きてきたのに。



彼が生きていると分かれば、今まで止まっていた全てが急速に動き出す。



それを恐れ、長くシェイラをあの部屋に匿ってきたのに。



焦るオーリングに対し、ジンノは睨みつけるようにシェイラを見上げた。



口元は引き攣ったような笑が。



「丁度いい............」



ジンノはそう言うと、魔導銃をシェイラに向けて、放った。



バキンッ



死の呪詛の込められた銃弾が魔導壁にあたり、シェイラの目の前で音を立てて止まる。



その瞬間、闘技場の内側に張られた透明でガラスのような魔導壁が弾丸がめり込んだ場所を中心に、パキパキと音を立てて崩れ落ちていった。



(魔導壁が......!!)



この闘技場は特殊部隊が使用するため特別高い魔力値を防御出来る魔導壁を設置している筈だ。



その魔導壁が崩れ落ちた。
つまり、魔導壁が防御出来る魔力値を超えてしまったということ。



(この人、本気で殺す気だ......!!)



オーリングは青ざめる。



ジンノはもう一度、魔導銃構え直し、引き金に手をかけた。



その顔にはもう、笑はない。



オーリングが、シェイラ様っ、と駆け寄ろうとするとそれを察したのかジンノが空いた手を小さく振り上げる。



〈ダーク〉ケーフィル



それを呟き、上げた掌を握り締めるジンノ。



その瞬間オーリングの身体が金縛りにあったように固まる。



邪魔するな。



彼の目が、そう語っていた。



「お逃げくださいっ、シェイラ様!!
ジンノさんは本気で殺す気だ!!魔導壁も壊された!!頼みますから、逃げてっ!!」



唯一、自由に動かせる口で必死に叫ぶ。



しかし、シェイラは表情を変えず、静かにジンノと対峙していた。



王家の血筋を感じさせる黄金の瞳が一際凛と輝く。



「...はっ、お前のその態度がムカつくんだよ。
昔っからな......」



(ああ............)



ジンノの真黒な目に宿るのは、確かな怒りと、恨みと......



そして“殺意”、その物だった。



「死ね」



ジンノはそう言うと



躊躇いもなく



引き金を引いた。