櫻の王子と雪の騎士 Ⅰ





ざわざわと騒ぐ音がした。



ジンノもオーリングも、何事かと意識のみをそちらに向ける。



闘技場は広く、王宮の一部を一階から五階まで吹き抜けにしてドーム状に作られている。



その壁の中腹あたりには、外から中が覗けるような観覧席が設けてあるのだ。



正式な闘技場ではなく、特殊部隊の訓練の為に作られた場所であるので、外から中を見る場所はそこしかない。



ガラス張りにされたその場所が、ざわざわと騒ぐ。



二人はようやくその場所へと目を向けた。



そこに立つ人物に予測もできず、ただじっとそこを見つめる。



「............は?」



直前まで味わっていた恐怖に思考が停止していたのか、ここに居るはずもない人であるために無意識に認識することを躊躇ったのか。



徐々にオーリングの表情が、驚愕の色に変わっていく。



「......何で......!!」



そこに立っているのは、この場所にいてはならない人。



「生きていたのか......!!」



ガラス越しにこちらを見る人物を認識したジンノが、それを口にする。





そう。






そこに立っていたのは、死んだはずの人間。





人々の記憶の中から消えたはずの人。





フェルダン王国の第二王子。





セレシェイラ・フェルダン





その人だった。