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「ジンノさん、一体何を?」
特殊部隊のみが使用する、魔導壁が設置されている闘技場に、ルミを横抱きにしながら現れたオーリング。
ジンノは闘技場の中央で佇んでいた。
「............」
何も言わずにぼんやりと立っている。
困惑しながらもオーリングはジンノに近づいていった。
すぐ傍まで近づくとジンノはようやく気づいたのか、オーリングの方を振り返る。
ルミをその目に確認すると、一気に表情が緩み、頬に手を伸ばす。
頬にかかった色素の薄い髪を払い、微笑みを向けると、すぐにオーリングへ向き直るジンノ。
「ルミを下ろして、そこに立て」
「あ、あぁ、うん......」
オーリングは戸惑いつつも、言われた通りルミを壁際へ下ろし、ジンノから数メートル離れた場所へと立った。
そして、ギョッとした。
無理もない。
ジンノが自分に向かって拳銃を突き付けているのだから。
「ジンノさん!?」
一体これから何が始まるのか分りもせずに、拳銃を突き付けられているのだ。混乱しても仕方が無い。
しかし目の前の男は、至って普通の態度でオーリングに言う。
「お前をこんな事に巻込みたくないが、悪く思うなよ。全てはルミの為」
カチンと、拳銃のロックを外す音が闘技場内に響く。
「1ミリたりと、動くなよ。俺もお前を殺したくない」
背筋が凍る言葉と一緒だった。
オーリングの頬に微かな痛みが走ったのは。
ドンッドンッドンッ
矢継ぎ早に、自分に向けられた拳銃から弾が飛び出す。
全て弾を打ち終わったのか、ジンノが手早く交換して、休む暇もなく再開する。
オーリングは、頭の中が真っ白になりながらも、ジンノの言いつけ通りとにかく動かないようにしていた。
と言うより、恐怖でそれしか出来ないのだ。
何も考えずにひたすら固まる事だけに力を注いでいた。
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どれくらいそうしていたのだろうか。
「......やはりこれではダメか......」
ぼそり言ったジンノの一言で、漸く拳銃はオーリングの前から下ろされた。
一気に力が抜け、ドサリと座り込む。
気付けば、全身が震えいた。
体を確認するがどこにも傷はついていない。
しかし、服はボロボロになっていた。
焼け焦げたところまである。
(本当に、少しでも動いてたら撃たれてた......)
その事実にゾッとして、一層、恐怖に震えが走るオーリング。
恐る恐る後ろを確認すると、拳銃から放たれた銃弾が百近く転がっていた。
知らぬ内にこれだけの銃弾が自分の真横を通っていたのかと青ざめるオーリングだった。



