そしてその二日後。
シェイラは二つのイヤリングが入った小さな木箱を手にしたまま、それをじっと見つめていた。
真珠のように美しいそれと、黒光りするそれを見つめながらずっと考えていた。
ルミのことを。
そして、自分の事を。
「シェイラ様」
不意に名を呼ばれ、振り向くとそこには昼から姿を消していたエンマがいた。
「......どうした、エンマ」
ここ数ヶ月見せていた、穏やかな表情のシェイラは、もういない。
だが、ルミが現れる以前の頃のように無気力で死だけを待っている様にも見えない。
「...ジンノ様が、ルミ様とオーリング様を連れて闘技場へ向かわれました」
シェイラの目には、確かな『覚悟』が見えたような気がした。
だからエンマは言ってしまったのかもしれない。
きっと、言えばシェイラはどんなに止めようと、それを振り払って外に出ようとするだろう。
彼を外に出してはいけない。
その為にエンマはここにいる。
だけど
「エンマ、分かっているな」
もう、限界なのかもしれない。
覚悟をしたこの人を
ここに閉じ込めておくのは。
「俺を、彼女の元へ連れていけ」
エンマはこくりと無言で頷く。
すると
シェイラは、引出しから小さめなナイフを取り出し、長く伸びた髪にあてがい一息に切り落とした。
「!!」
掌から溢れ、ハラハラと落ちていく。
ベッドから立ち上がると切り落とした髪をゴミ箱に捨てる。
そして、その手はイヤリングの入った箱へと伸び、漆黒に輝く方を手にとり、左の耳へと付けた。
ほんの少しの顔の動きで、光を受けたそれはきらりと輝く。
もう一方のイヤリングを手にし、握り締めながら力強い黄金に輝く瞳をエンマへと向ける。
「行こう、エンマ」
シェイラの足が一歩を踏み出し
その手を黒塗りの扉にかけ、決意したように言う。
「もう、ここへは戻らない」
そして、シェイラは影の部屋を後にした。



