ジンノが相手をした敵国の兵士たちが一向に目覚めないと言うのだ。



国王が大臣を引き連れ、乗り込み、何故だどうしてだと騒ぎまくる。



フェルダン王国国王であるシルベスターは先日の事件での怪我により療養中なため、彼らの相手は頭の硬い年配の大臣達が行う。



対処に困った大臣達が、ジンノ本人に説明を求めたというわけだ。



兵士達にかけた魔法の解き方を教えろという相手に対し、ジンノは「方法は伝えた」の一点張り。



何でも、戦争終了後指揮官らしき男に、どうしたらいいかを伝えていたと言う。



「俺は同じ事は二度言わない。自国の兵士命一つ守れぬ愚かな王よ。礼儀と立場の一つでも弁えてから出直して来るんだな」



そんなことを言われてプライドの高い王が黙っているはずもなく。



その場は大騒ぎになり、それでもジンノは平然とその場を後にして出てきたという次第なのである。



まったく、とんでもない男だ。



その時のことを思い出し、二人は同時にため息をつく。



これから、煩く喚く彼らを相手するのは自分たちなのだから憂鬱にならないはずもない。



「だいたい、頼みに来ているにもかかわらず頭の一つも下げない常識知らずを相手にする俺達のことも考えてほしいものだよな」



二人が大臣達の待つ議事堂に戻る最中、エルヴィスが愚痴をこぼす。アルマはそれに何も言うことなく笑って返す。



生真面目な性格のアルマに対し、お気楽で陽気な性格のエルヴィス。性格が真反対の二人だが、幼い頃から二人で育ったからか、実の兄弟のように仲がいい。実際、未だに兄弟だと感違いしている人も少なからず居る。



戻る途中、ふと、エルヴィスが思い出した様に話始めた。



「...そういえばジンノ様、帰って来てからちょっと様子が変だと思わないか?」



突然の話の内容に多少驚きはしたがアルマも思い当るふしがある。



「え?......ああ、確かに。なんだかぼんやりしてることが多いよな。...考え事してるとしても、顔に出るような人じゃあないんだけど」



冷静で自分の感情を表に出すことはないジンノ。まるで感情の無いロボットみたいに生きているような人だ。



アルマが仕え始めてからというもの、こんなにぼんやりとしているジンノ見たことが無かった。遠征先から帰って来て丸三日ずっとこんな調子なのだ。



どこか遠くを見つめてボーっとしてることが多い。



アルマとエルヴィスは顔を見合わせ、首をかしげた。