フェルダン王国では、魔法使いなら誰でも特殊部隊に入れるというわけではない。



国によっては、魔法学校を出ていればすぐに特殊部隊に入隊できる国もある。



フェルダン王国の特殊部隊は10人で編成するように人数が決められているため、望んだとして入れるわけじゃないのだ。



入隊するには、実際に特殊部隊に所属する者との一体一の実践的な戦闘を行い、隊長に認められてやっと入隊ができる。



魔法学校をトップで卒業したからと言っても、認められなければ入隊は不可能なのである。



その狭き門を通過できた者で編成されるからこそ世界随一の強さを誇るのだ。



殆どの魔法使いは、その狭き門の前にも立てずに終わる。



そんな魔法使いは、光属性の治癒魔法が使えれば医療班に。体力に自信がある者は軍に。知識を持つ者は二人のように補佐官として働く。



他にも魔法使いであれば、仕事はいくらでもあるのだ。



だが、魔法使いである以上、目指す場所は誰であっても特殊部隊。



フェルダン王国の特殊部隊は魔法使い達の憧れそのものなのである。



勿論、アルマとエルヴィスも。



特殊部隊副隊長の補佐官になってから、そのあこがれは一層強くなる一方。



さらに、現在、特殊部隊は9人しかいない。枠が一人分空いているのだ。



しかもその状態のまま、もう5年は経つ。



もうこのまま九人編成で行くことになるのかと仲間内で噂になるほど、長く空席になっている。



誰かの為に開けているという噂もある。



だが、あくまでも10人編成として扱われるため魔法使い達は憧れをさらに強くするのだ。



「ジンノ様が、また何か伝説作ったんだろう?」



苦笑しながらエルヴィスはアルマに尋ねる。



「ああ...凄いよあの人は。いや、あの人達は、だね」



「ははっ。そうだなぁ......凄いよ、次元が違う」



互いの主がやらかした、とんでもないことを思い返し苦笑いを浮かべる。



オーリングは国と王を守り、ジンノは一国の軍隊をたった一人で一掃した。



この二つの出来事は、今やこの国の人々の語り草である。



特にジンノの方は、世界一の軍事大国を破滅に追い込んだとあって、世界中が大騒ぎである。



今、大臣達が騒いでいるのもこのことが原因。