あの頃の君へ




私はブスッとしながら食器を洗ってくれている拓真の後ろ姿を眺める。



あーあ。


これで性格も可愛かったら……



いやいやいや、ちゃうちゃう。ないないない。



ゴツンとテーブルに額を付けて、目を閉じていると目の前にコップを置かれた。



「……何よ」



「はぁ……本当に可愛げねーな」



「う、うるさいなぁ!」



顔を上げると「ん」とコーヒーを差し出される。


「……ありがとう」



少し不満気にお礼を言うと、湯気の向こうに見える拓真は私を見て満足そうに微笑んでいた。



「……っ」



「なに?言っとくけどまだ熱いからな」



思わず驚いてしまった私に拓真はキョトンとした顔で答える。



胸の奥がどうしようもなく疼く。


それはもう随分と前に蓋をした気持ちが再び、少しずつ私の中に芽生え始めた瞬間だった。



「あー、私ってホントに馬鹿なのかな」



「え?今さら?」