「ねぇ、本当に男の力に敵うと思ってんの?」
何とか腕を振ろうとしてもびくともしない。
そしてあろうことか、目の前にいる拓真は今まで見たことがないような大人の男の顔になっていた。
拓真の顔はどんどんと私に近付いて、鼻がぶつかりそうな距離で止まった。
「ちょ、拓真っ……待ってっ……」
「何それ。そんな表情したら逆効果なんですけど?」
「た、くま……?」
「みのり……」
少し掠れた寝起きの声がダイレクトに耳に届く。
「ちょっと……」
「……早く起きて四の五の言わず朝飯作れよバーカ」
フッと拓真は離れて少し伸びた綺麗な黒髪と、お腹を掻きながらリビングへ行ってしまった。
「なっ、なっ……」
何なのよもうー!!!!

