「先生〜いいですか〜?」

「お〜う、何だ〜?」

榎本は一年生に呼ばれると、嬉々として立ち上がって行った。

「あ〜ゆ〜のは、ありなんだな…しかし、先輩が後輩にアドバイスする事はあるだろ?」

「え〜?そんなの一度もないですよ〜?」

一年の秋山が、話に入ってきた。

「え?そうなのか?冬馬」

「…そんな事、怖くて出来ないですよ」

「んじゃ、先輩と後輩の関係って…」

「ないですね…美術部に、上下関係はないと言っても過言ではないですし…ヘタすると、横の関係もないかも…」

「へぇ〜」

その時、金属製のゴミ箱に何かを放り込む音が、゙ガン゙と鳴った。

「な…なぁ、あいつ機嫌悪いのか?」

実はさっきから定期的に、゙ガン゙という音が部室内に鳴り響いていたのだが、椿は耐えられなくなって冬馬にたずねた。

「え…夏野君の事ですか?たぶん違うと思うけど、聞いてみますか?」

「えぇ?!」

「あ、私も一度、聞いてみたかったんですよね〜」

筆を置いて立ち上がった冬馬の後に、秋山もついて行く…