ジュオームエネルギーを浴び、変化する前は、十二歳の黒人の少女だった。
ヘンリーが人面手首とするならば、このリリーの姿は人面大腸と呼ぶべきだろうか。


リリーは噛み砕いたビルを飲み込むと、男を見下ろした。目があった。


「ひっ、ひいいいいいいいいいいっ!!!」


男は絶叫して立ち上がり、再び走りだした。


しかし、二、三歩足を踏み出した時だ。


急に体が、宙に浮き、ぐるんと回転したかと、思うと、突然周囲が闇に包まれた。


「……え?え?え?」


男は混乱した。
気がつくと、真っ白な岩のようなものの上に乗っかっていた。
突然の闇で、一寸先も見えなかった。
物凄い異臭がした。男は顔をしかめて鼻をおおった。
少しして、闇に目が慣れてきた。
真っ白な岩のようなものは、男が乗っかっているものの他にも、横一列にたくさん並んでいた。
その下に、ピンク色の、濡れた柔らかそうな地面が広がっていた。それは、ぐねぐねとうごめいていた。
まわりを見渡して、男は気付いてしまった。


「………あ、ああ、ああああああああああっ!!」


ここはあの怪物の口の中だ。この真っ白な岩のようなものは巨大な歯だ。ピンク色のぐねぐね動く地面は巨大な舌だ。
いつの間にか、食われていたのだ。
さっき逃げようとしたとき、リリーは一瞬で男に追いつき、男の体を口にふくんだのだ。
ごおっと、上から何かが降ってきた。
それは、真っ白な岩のようなもの。
巨大な上の歯だった。
男の肉体は、巨大な歯に挟まれ、噛み潰された。


「ぎゃぎっ、ぎぎぎぎっぎゃあああああああああああああああああああっ!!!ぎぎゃあああああああああああああああああああっ!!!!ぎゃあああああああああああああああああああっ!!!」


挟まれた巨大な歯からはみだした上半身を、痙攣させた。激しくばたつかせた。腕を振り回した。血をべしゃべしゃと吐き散らした。
上の歯があがっていった。一噛み目が終わったのだ。男の下半身の肉は、ぶちゃぶちゃに潰れていた。男はなぜかぼんやりともんじゃ焼きを思い浮かべた。
すぐに二噛み目がきた。
上の歯が降ってきた。
今度は悲鳴をあげる間もなく、男の頭はあっさりと噛み潰された。


リリーはどろどろの肉片になった男の体を飲み込むと、かわいらしい笑顔を浮かべて、唇についた血をなめた。