「あほくさ」


豊作は耳をほじると、部屋の隅で震えている由美に言った。


「おい、腹減ったから、メシ食わせてくれや」


「え?え?え?」


見上げる由美は涙目だ。


「食堂はどこだ?案内してくれよ」


「あ、あの、……あれ、止めないんですか?」


由美は全身血まみれになった策郎と雄介を指さした。


「ああ、大丈夫だ。あいつら二人共、そう簡単に死ぬタマじゃねえよ。見たところ実力は五分だからな。すぐにヘトヘトになって、二人同時にぶっ倒れるだろうから。そん時に治療よろしくな」


「……そ、そうなんですか?」


由美には理解できない次元の話だった。


「フレーっ!フレーっ!九島策郎!ファイトっ!ファイトっ!牙倉雄介!」


竜児は、楽しそうに踊りながら二人を応援していた。


そのとき、入り口の扉が開いて、男性の所員があわてた様子で駆けこんできた。


「所長!大変で……、どわっ、何じゃこりゃ?」


所員はあとずさった。


竜児は、踊るのをやめて振り向いた。


「ん!?何だ!?どうしたどうしたどうした!?」


「せ、政府から、救援要請が来ました。首都がジュオームチルドレンに襲撃されているので、対応してくれと……」


「何じゃ!そんなの知るか!いまこの二人の戦いが面白いところなんだ!そんなのほっとけ!」


「ちょっとお兄ちゃん!ダメでしょ、マジメにやらないと」