「どこに行った?」


策郎は周囲を見回した。
見渡すほどの広さ格納庫のは、搬送用のトラックが五十台。戦車が百台。それに交じって、大量武器類を入れた貨物ケースが高く積まれている。
雄介はそのどこかに素早く隠れたようだ。


「ちくしょう、うっとうしい奴だな」


気配が全く感じられない。


「ちょっとやめなさいよ!」


タツミがとがめるが、策郎は無視した。
すると、どこからともなく雄介の声が響く。


「八乙女博士、大丈夫ですよ。殺しはしません。こんな奴、演出する価値もない。ちょっとからかってやるだけです」


「そこか!」


策郎が声のした方に向かって走りだした瞬間、まったく違う方向からナイフが飛んできた。


「くっ」


とっさにそれを叩き落とす策郎。


「へえ、反応速度はなかなかのものですね」


「てめえ、だせえことしてんじゃねえよ!堂々と姿見せやがれ」


「嫌ですね。あなたの野蛮な趣味にあわせるつもりはありませんから。ほら、こんなのはどうですか?」


すると、今度はまったく違う三方向から三本のナイフが飛んでくる。
策郎は二本はよけたが、一本だけ顔をかすめてしまった。頬に小さく傷ができる。


「くそっ」


策郎は貨物ケースを背にしてしゃがんだ。これで、少なくとも、背後からの攻撃は防げる。
ふと、貨物ケース表面に貼られたステッカーを見た。ケースに入れられている物の名前が書いてある。それを見て、策郎は打開策を思いつく。