十日後、操縦シュミレーションでの練習を終えた三人は、実際に機体に乗り、試乗テストを行うことになった。


八乙女研究所の格納庫にて、パイロット達三人は、初めての対面を果たした。


「あれ?破藤のおっさんじゃねえか」


パイロットスーツに着替えた九島策郎は、見覚えのある巨体を見て、驚きの声をあげた。破藤豊作も、目を丸くする。


「おめえ、策郎じゃねえかっ!?何やってんだ。こんなところで!?」


「知り合いなの?」


八乙女タツミが聞くと、策郎が答えた。


「ああ、おれな、一時期、破藤グループで働いてたことがあったんだ。ま、殺し屋としてね。そんときに豊作のおっさんにゃ、いろいろ世話になっててさ。へえ、おっさんもパイロットに選ばれてたんだ。すげえ偶然だな」


「偶然だな、じゃねえよっ!てめえ、五年前に『飽きた。バイバイ』なんてふざけた手紙残して勝手に消えやがってっ!しかも会社の金、大量に持ち逃げしやがっただろ!」


「退職金だよ。退職金。あのときは、おれのおかげで殺しの仕事がスムーズに進んだろ?あれくらいの金、安いもんさ」


「スムーズだあ?ふざけんじゃねえぞ!依頼された人間ひとり殺すに、てめえは何回ビル崩したり、屋敷爆発させたりしてきた?証拠揉み消すのに、おれがどんだけ苦労してきたと思ってんだ、コラ!?」


「だって派手なほうが格好いいじゃん」


「おまえってやつは……っ」


豊作があきれて絶句したとき、涼しげな声が会話に割りこんできた。


「くだらない話はやめて、早く試乗テストを始めませんか?八乙女博士、奴らが襲ってくるまで時間がないんでしょう?」