「性欲だよ」


「は?」


タツミは一瞬、その言葉を理解できなかった。


「まだ赤ん坊だったミチを初めて見たとき、思ったんだ。こいつは大人になったら、いい女になりそうだってな。そんで、大人になったミチとやりてえ、と思った。だから赤ん坊の両親を殺して、ミチをおれのものにした」


タツミは何も言えなかった。豊作はにやつきながら続けた。


「依頼に背いて、破藤グループに追われることになっちまったが、まあ、ムラムラしちまったんだからしょうがねえよ。そういうわけで、おれはミチを大事に育てることにした。そしてあと二十年くらいたったら、ミチとやりまくるんだ。なあ?ミチ?」


ミチは豊作の足にしがみついたまま笑って言った。


「うん!わたし、大きくなったら、すごくきれいな女のひとになるの!それでお父さんに抱かれるの!」


無邪気な笑みだった。幸せそうな笑みだった。自分が話していることの異様さを知らない。そういうふうに育てられたのだ。


「不細工に育ったらすぐに殺すつもりなんだけどな。いまんところ可愛らしく育ってくれている将来が楽しみだ」


豊作はいやらしく笑った。


タツミはしばらく呆然としていたが、やがて、声を殺して笑い始めた。


よかった。これで破藤豊作にも、三つめの条件が満たされた。


吐気をこらえながら、タツミは豊作に事務的に話しかけた。


「では、お二人を八乙女研究所へ案内します。ついてきてください」


豊作とミチに背を向け、歩きだすと、タツミは嫌悪の表情を露にした。豊作の考えは、女として許せなかった。


胸の中で、タツミは最後のあの言葉をつぶやく。



三人目、地獄へようこそ。