「……ある日……そんな僕らの前に、お偉方からある命が下されました」
沖田先生はここで初めて俺の方に目を向けた。
「その命は」
沖田先生の顔は月明かりで影ていた。
今は真夜中。
月明かり以外、他に灯りはなにもない。
けれど……沖田先生の瞳には何か、焔のようなものが宿っているようにみえた。
「ーーーーー」
沖田先生の言葉と共に、今日一番の強い風が吹いた。
何枚かの葉が宙を舞う。
「沖田先生……」
「後悔してる訳ではありませんよ」
被せるように言った沖田先生の口調は、妙に明るかった。
「むしろ……暗殺に参加できたことに、感謝すらしています」
「感謝、ですか」
どういうことだろうか。
暗殺とは、恐らく芹沢先生のこと。
いくら芹沢先生が組に迷惑を与えていたとしても、自分たちの局長を手に掛けたいなど、誰が思うだろうか。
「実は私自身…芹沢先生のことを、心の何処かで慕っていました」
一歩、沖田先生が俺と距離を詰めた。
「そんな先生の命を、他の誰かに奪われるくらいなら……」