「……とにかく、もう休め」
山口さんは、断ち切るようにそう言うと、おもむろに立ち上がった。
蘭丸のことで俺に気を遣ってくれているのだろうか。
山口さんの鼻を啜る音が聞こえてくる。
「……山口さん、有り難う御座います」
「何に対しての礼だよ、それは。その言葉を言うべき相手は、俺じゃないだろうが」
確かに、俺が最も礼を言うべきは命を呈して俺を助けた蘭丸だろう。
そして、俺たち二人を探しここまで運んでくれた山崎さん。
だけど、その二人だけじゃない。
俺が、今こうしてここにいるのは、
「……それでも、山口さんは俺が起きるまでずっと傍にいてくれてたんでしょう」
ーー山崎と一緒に。
「お前、なんで」
「分かりますよ、それぐらい。山口さんとは同じ組で今までやってきたんですから」
「……」
「だから、分かります」
「古宮……」
だから、分かる。
何故だろうか、その言葉は嫌にくすぐったかった。
それでも山口さんに言った言葉は全て、自分の素直な気持ちだった。
「な、なんだよ……別に俺は」
山口さんは照れ臭そうに何かを言いながら、部屋を出て行った。
一人の空間に、思わず涙がこぼれそうになる。



