「ーーー古宮!」



「気ぃついたんかっ⁉︎」


ここは……。



見慣れた天井。



聞き慣れた声に、俺は冴えない頭を働かして声主を探した。



「……山口さん。それに……山崎も」



俺の枕元には、同じ一番組で先輩である山口さんと、山崎さんの従兄弟である山崎が、心配そうな表情で俺の顔を覗いていた。



そっか……戻って来れたんだ。



「屯所……」



あれ、【戻ってきた】?



ーーどうやって



ーー吉田は?諸伏は?



ーーーー蘭丸は?



俺は布団から飛び出ると、手近にいた山崎の胸倉を掴む。



「……蘭丸は」



大丈夫なのか。



それ以上の言葉は続かない。



何故か声が震えて、山崎の胸倉を掴んだ手にも力が入らなかった。



「……そのことやけどな」




山崎は一瞬視線を右下に逸らすと、直ぐに俺を見据え返して、



「正直、大丈夫とは言えんな」



「……っ」



酷く冷めた言葉だった。



山崎はいつの間にか仕事の顔で、蘭丸の容体を話していく。



こいつもまた、動揺しているのだろうか。



「傷は左眼だけって言うても、傷は深いし、かなりの出血もしてる」




山口さんは、拳を握りしめたまま山崎の話を聞いていた。



「まぁ……掛かりつけの医者にも看てもろたし、今は兄貴が看病してるから、お前はまだ暫くここに居れや」



山崎は俺の手を難なく解くと、報告があるからと部屋を辞した。



他の隊士たちはどこに行ったのか。



部屋は……屯所中はまるで葬式の時のように重ぐるしい静けさに包まれていた。