黒装束に着替えた俺は、山崎さんが下見の際に用意してくれた隠し通路へと身を潜らせる。
通路は狭く、人が一人入るのがやっとだった。
「(…藤の間はここだな)」
屋根裏に辿り着いた俺は、気配を消して、小さな隙間に目をやった。
女将の言った通り、長州の奴らはしこたま酒を飲んだらしく、赤い顔で騒いでいる。
「(だらしないな。大の大人が、飲み腐るまで騒ぐなんて……いや、でも)」
一人だけ、真面な奴がいらしい。
その男は、色白で黒髪を下ろし、優雅に盃を交わしていた。
まるで、彼処だけが別世界のようで、男の俺も息を飲むほどに美しいと感じる。
しかし、見惚れる反面、俺は恐怖した。
あの男は、他の誰よりも、
ーーー危険だ。
と。



