「ーーいらっしゃいませ」



下働きの女中に女将の元へと案内を頼むと、女中は何かを察したのか、奥の部屋へと案内した。



女中は、一言二言襖に声を掛けると、ゆっくりと襖を開いていく。



中に入るように促され、俺は静かに足を踏み入れた。



「ーーあんたはんが、土方はんの言うてた若い新米隊士どすな。話の通り、かっこよろしい事で」



はんなりとした微笑を浮かべて、四十代前後の女将は言った。



「話は通っとりますえ。あんさんらの睨んだ通り、吉田はんらは、少し前にうちんとこに来とります」



「それで、どの部屋に?」



「藤の間どす。二階の大広間を貸し切って、今頃どんちゃん騒ぎしてるころでしょなぁ」



俺は手短に礼を言って、藤の間へと足を向けた。



下働きとして潜伏している蘭丸も今頃、そこにいるだろう。



ま、俺はそのまま藤の間に入る訳にはいかないから、黒装束に着替えて屋根裏に登るけど。