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「任務の内容は覚えとるな?」



町人の格好をした山崎さんが、俺の肩に手をおいた。


俺もまた同じように町人に扮している。


頷く。


山崎さんはそれを確認すると、懐から短刀を取り出して、俺に持たせた。


俺は、手の上に置かれた短刀を確かめるようにして握り込む。



「持っとき。ええか、気ぃ抜いたら御陀仏やと思とけ。長州の奴らは、お前が思っとるより甘ないで」



「はい、分かってます」



短刀でも、刀は刀。


人の生命を奪えるこの業物は、大刀を手にしている時のようにズシリと重い。


俺は懐にそれを忍ばせると、山崎さんと別れて、路地裏を出た。



向かうのは、島原にある角屋という揚屋。


今回の任務はそこで、行われる。


任務の概要はこうだった。


最近、京に長州の過激派である吉田稔麿らが、頻繁に島原に出入りしているという情報が監察方から入った。


その真偽を確かめ、吉田達の企む計画の察知。


俺は客として、そして京は吉田達が来るであろう店……つまり角屋の下働きとして潜伏するのだ。