「……そうか」
土方副長は、俺から目を外して、呟いた。
そのまま腕を組んで、目を瞑る。
何かを考えているようだった。
「ーー山崎」
「はいな。お呼びでっか?副長」
「えっ……⁉︎」
いつの間にそこに居たのだろうか。
背後にある襖が開いたかと思うと、山崎さんがひょっこりと顔を出した。
山崎さんは蘭丸と目を合わせると、微かに笑って見せる。
色白で細身の山崎さんは、同じような容姿をした蘭丸と並ぶと、兄弟のように見えた。
「あれを決行する。みんなを集めろ」
「ーー御意」
真剣な顔で頷くと、山崎さんは一瞬にして俺の視界から消えた。
あまりの速さに蘭丸を見ると、蘭丸はそっと微笑んだ。
どうやら、何時ものことらしい。
「ーー古宮、矢口。お前らに初任務だ。心して聞け」
「「ーーは、はいっ」」
今にして思えば、この土方副長の言葉が、長い夜の幕開けの言葉となったんだろう。