月明かりに照らされた蘭丸は、何処か儚げで、今にも消えてしまいそうだった。


生まれつき色素の薄い髪に、女子のような華奢な身体。


そんな蘭丸の外見が、俺にそんな幻覚を見せてくるのかもしれない。



「……蘭丸。俺が入るからってお前が【彼処】に入る理由にはならない。理由は何だ?」



出来るだけゆっくりと、名前を呼んだ。


蘭丸に、俺が怒っていると勘違いされたくない。


俺はただ、蘭丸の理由が知りたいだけ。


蘭丸は俺から視線を外すと、空を見上げた。


ほうっ……と、白い吐息が蘭丸の小さな口から零れる。


俺も蘭丸のように空を見上げると、次々に舞い落ちて来る粉雪が、月の光に反射してキラキラと輝いてみえた。


綺麗だ……。


素直にそう思った。