壬生寺に、風が吹き抜けた。
冷たい風が、身にしみる。
年は明けたものの、冬が終わったわけではない。
「……寒いね。汗、乾いてきたんじゃない?」
「いや、大丈夫だ。蘭丸こそ、どうなんだ」
蘭丸は脇腹を一撫ですると、得意げに笑って見せた。
「……平気さ、こんなの。それに、俺の薬は何よりも効くからね」
先ほど齋藤先生にあげた薬包紙と同じものを、蘭丸は懐から覗かせた。
「冬桜か」
「……流石。京もお世話になってたからね」
蘭丸の言うとおり、この【冬桜】という名の薬には世話に塗っていた。
打ち身に効くこの薬は、道場に通いたてだった頃、いつも青痣を作って帰っていた俺にとって、なくてはならないものだった。
この薬は、蘭丸だけが知る調合がされているらしい。
蘭丸は大事そうに薬包紙を戻すと、木の幹に背中を預けた。
静寂が訪れる。



