Closed memory


それを見た蘭丸は、やっぱり……と顔を顰めた。


「……すみません、俺がもっと早く気付いていれば、代役を立てて貰えたかもしれないのに」



俺は、蘭丸が持ってきた桶で手拭いを濡らした。


汲んだばかりなのだろう。
水はキンキンに冷たかった。


それをそっと絞ると、打ち身の部分にそっと乗せた。


「……まぁ、骨に異常はないので、四、五日すれば腫れも引くと思います。取り敢えず今日は冷やして下さいね」



蘭丸は懐を探ると、薬包紙を二つ取り出して齋藤先生に握らせた。



「……これ、今日と明日の夕餉の後に飲んでくださいね」



「かたじけない……」



齋藤先生は、引き攣った顔のまま、蘭丸に握らされた薬包紙を握りしめた。


もしかして、こうなるのが嫌だったのか。


薬嫌いなのか、齋藤先生は。



煙管を咥えた土方副長が、顔を出した。
眉間の皺はまだ刻まれている。



「齋藤、俺の部屋に来い。審議を始めるぞ」



「ー御意」



「二人は、呼ばれるまで此処にいろ」



それだけ言うと、土方副長は齋藤先生を連れて屯所へと帰って行った。