「齋藤先生」
「京……か。最後のあの太刀、よかったぞ」
齋藤先生は、俺と目を合わせると、小さく微笑んだ。
まだ、息が整っていないらしい。
僅かに肩が上下していた。
「……どっちですか」
俺が訊ねると、齋藤先生はあからさまに身を引いた。
まるで幼い子供のように、首を横に振ってくる。
「いいから早く見せてください。早急に手当てしないと、隊務に支障がでるかもしれませんよ」
「これくらいの打ち身は、よくある事だ。お前が気にする必要はない」
「ですが先生‼︎」
「悪いが、放っておいてくれ。手当は一人で出来る」
木陰に大童が一人。
どうしようかと悩んでいたその時、
「……片手しか使えないのに、上手く手当ができるわけないでしょう。齋藤先生?」
「……うっ」
「蘭丸。お前、それ」
水の入った樽と、清潔そうな手拭いを抱えた、蘭丸の姿があった。
「……先生に怪我させた張本人ですから、俺は。手当する義務が、俺にはありますよね?」
「気付いてたのか?」
「……確信はなかったさ。仕掛けて直ぐに先生に胴を打たれたし……。でも、京との試合を見てて、気づいた」
言いながら蘭丸は、齋藤先生の右手を自分の方に引っ張り出した。
袖をめくれば、赤黒く腫れている。



